2012年11月29日木曜日

俺はブルックリン生まれヒップホップ育ち


かっこE
Comlex誌の10 New NY Rappers To Watch Out Forにも選ばれていたDyMe-A-DuZiNが2012年の年末に出すミックステープからの先行シングル。この名前なんて読むんだろ。
コンプレックスの特集にもあるように最近ニューヨークのラッパーが息を吹き返しつつある。あまりちゃんと把握はしてないのだけど、A$AP Rockyあたりからルネサンスが顕在化してきた印象。注目すべきなのは、インディロック界隈で流行りのドリームポップや、ヒューストンに端を発するスクリューの要素が色濃く含まれたA$APの曲が示すように、かつて90年代前半に一世を風靡した「これぞ東海岸!」なサウンドを感じさせるニューヨークのラッパーはわりと少ないということ。そもそも20年も前の流行りのサウンドを今やらないのは当たり前じゃんって気もするけれど。
これは東海岸だけじゃなく西海岸についても言えることで、ようするに、もともと極めてローカルなものだったヒップホップ音楽から地域性が失われる傾向があって、例えばNYでダーティサウスなんかをやったとしてもまっとうに評価されうる雰囲気があるように感じる。

そんななかでこの曲。90年初頭にNative Tonguesが先導したニュースクール直球なトラックと共に、映像とリリックでもってブルックリンへの愛情をこれでもかと表現する侠気にしびれる。しかもあくまでスタイリッシュに、微塵も汗臭さを感じさせない。これはズルいっすわ。
アメリカ全土でヒップホップが(いい意味でも悪い意味でも)均質化していくなかで、その潮流に逆らうかのごとく、音楽性をもって自らの出身地をリプリゼントしていく姿勢を見過ごすことができようか。いやできない(反語)


DyMe-A-DuZiNはPhony Ppl.というコレクティブ名義でいくつか作品を発表していて、そのうち最新の2枚はname your price形式で彼らのbandcampから手に入れられる。

またソロ名義でも1枚ミックステープが出ている。

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こっちはChris BrownやRick Ross, Drake, Wiz Khalifaなど幅広いアーティストのビートをジャックしたりして、好きにやりたい放題してる感じ。
曲調が多彩なぶんいろんなフロウを聞くことができるけれど、トラックの派手さにフロウが妙に浮いてしまっていて、正直どれも特にピンとくるものではなく、試行錯誤の産物として聞くのがいいのかもしれない。
落ち着いたトラックとの相性はバッチリで、Phony Ppl.との“Does He Really?”あたりはとても良い。この曲ほとんどラップしてないけど。主張し過ぎないホーンがフックになり、ゆるく体を揺らしたくなる“Too Kool Fah Meh”もとても心地よい。

2012年11月25日日曜日

electraglide 2012

行って来ました。大阪での開催は7年ぶりらしい。お目当てはFlying LotusとあとまあFour Tet見れたら見とくか的な。

会場が南港のATCホールということでどことなく懐かしい。もうサマソニ用の野外スペースはマンションになってしまったしZEPPも移転してなくなってしまったけど。
会場レイアウトはこんな感じ。
ステージ移動ほぼなしで全アクト見れるというすばらしさ。メンツは削られてもこういうところが大阪の良さだなと。

仕事終わりで会場に向かったので、到着したのはNATHAN FAKEのアクトが佳境に入ったころ。Kode 9 はちょっと見たかったけど仕方ない。

TNGHTはHudson MohawkeとLuniceのユニット。
セットリストとしてはダブステップ〜ヒップホップよりの曲が多く、密度は低いがボトムが強烈な印象だった。あと細かいハットの連打がジュークっぽくもあった気がする。カニエのMercyのリミックスでLuniceがステージ前方に出てきて観客を煽ったあたりから終盤までがピークタイムだった。このあとのSquarepusher待ちの人も多かったのか、フロアの最前方でもスペースが確保できてすごく快適だった。

TNGHT終演から間髪いれずにSquarepusherが始まる。さすがに人が多いので例のトレードマークがスクリーンに映し出されるのを横目に外で酒を買い、Lステージの前方、つまりSquarepusher側から見て最後方で座りながらのんびり見る。おなじみのLEDヘルメットもかぶってました。人工的なのに野性的という矛盾した音には圧倒されたものの、初期作しか聞いたことないのもあってか正直よくわからんかった。途中からベースを弾きだしたけど、エフェクトかけすぎてまるでベースの音に聞こえなかったのには笑った。

そしてFlying Lotsへ。
本人を隠すかたちでスクリーンが設置されていてどんな演出になるのかと思っていたら、背後のスクリーンとあわせて3Dホログラムが映し出されていた。写真だとわかりづらいんだけどこれがすごい。

音楽もさることながらこの映像に釘付けだった。ただこれだけ有名なアーティストのステージとなると前方の客に変な奴らがいる確率も上がるみたいで、ライブではお馴染みの彼女を守るために抱きかかえながら周りの客に肘打ち食らわす彼氏とか、ステージそっちのけでフラッシュたきながら自撮りしまくるギャルとかがいて、そっちに気を取られたのが残念だった。「オーサカー」って煽るFlying Lotusに「お前どうせ昨日はトーキョー言うとったんやろ!」って野次には笑ったけどさ。自身の最新作にも参加し、先日亡くなったAustin Peraltaへのトリビュートを最後に流して終了。
終演後には下に降りてきたので握手してもらいました。

このあと休憩するつもりだったのに、Orbitalのアクトがいきなりかっこ良すぎたので思わず足を止める。
2曲目にはさっそく“Halcyon + On + On”をやったりして、出し惜しみなしの常時フルスロットル展開。ここまでのアクトとはまるで違うスタジアム映えしそうな豪快な曲が次々繰り出されて圧巻だった。“Satan”は世界大戦やファシズムを題材とした映像がスクリーンに流れ厨二感満載ながらもかっこよくてズルい。“Chime”ももちろんやったし期待以上の凄さだった。あ、もちろん例の電飾メガネつけてました。

ここらへんで眠気と派手な照明で目が開かなくなってきたのでまた酒買って喫煙所で一眠り。灰が降ってきたのでステージに戻って、Four Tetがプレイするのを最後方で寝ながら聞く。上品なダンスミュージックという個人的な印象とは裏腹な、アグレッシブな重低音が印象的だった。最後にLove Cryをかけたあたりで同じように寝てた人がわらわらゾンビみたいに起きだしてきたのが面白かった。

そしてラストのAndrew Weatherwall。
正直あまり興味も惹かれなかったし体力もアレだったので迷ったけれど、意外とよかった。幕開けはミニマルな展開でクソ地味だったのに、徐々に展開を広げていき気づいたときには観客を虜にしてしまっていたところはさすがというべきか。照明は派手すぎず地味すぎずとてもいい塩梅。客もステージを凝視するものもいれば乳繰り合ったり乾杯したり、みんなが音に身を任せて自由に振舞っている様子がみてとれ、純粋なクラブ空間が再現されていたように思う。

ただやっぱり眠いのと混むのが嫌だったので途中で切り上げて帰る。帰り道は死ぬほど寒かった。全体としては、Flying LotusやKode 9といった旬なアーティストだけでなく、OrbitalやAndrew Weatherwallみたいな過去の人と目されかねないベテランも各々の良さを発揮していて、幅広いダンスミュージックの魅力を幅広い層に訴えかけることができる良いブッキングだと思った。人が言うほど多くないのもあってか運営への不満は特に無し。ベストアクトはOrbitalで。

2012年11月20日火曜日

ARIA The NATURAL [2006]

2クール全26話と話数が多いぶん、各キャラクターの過去話とか掘り下げがしっかり行われていた。1期と比べると地味さが目立っていて、正直途中でダレそうになるところもいくつかあった。それでも、1話1話にテーマがちゃんと定められていたりして、意識して見ていると本当に丁寧に作られているのがわかるし、制作陣の愛情が伝わってくる。
逆にストーリー展開に派手さがないぶん、見ているだけで心温まる雰囲気を手に取るように感じることができて、佐藤順一監督の真骨頂を思う存分味うことができる。
他にも髪切ったあとの藍華ちゃんがかわいすぎるとか、一家に一匹アリア社長が欲しいとか、好きなところをあげるとキリがない。

ベストエピソードは第15話「その 広い輪っかの中で…」
暁の過去エピソードも微笑ましいけど、終盤の演出がすばらしい。灯里を取り巻く人々が、出会ったり素通りしたり。直接知り合ってるわけじゃないんだけど、みんなひとつの輪のなかに存在している。そうやって見えないところで人と人はつながっていると考えると、少し心が暖かくなる。
次点は第21話「その 銀河鉄道の夜に…」
ケットシーとの交流がクライマックスを迎えるところで夏待ちを流すのは反則だわ。
他にも、贈り物がテーマで灯里の仕草が特にかわいかったりする第8話や、藍華ちゃんの女の子らしい一面が全開の第19話、男女入れ替えで笑いが止まらなかった第22話あたりもお気に入り。最終話冒頭の、凍てつくような一面の冬景色に牧野由依の弾き語りが合わさる場面では絵と音が最高にマッチしていて、僕がARIAを好む理由のひとつがもっとも色濃く出ている瞬間だった。

このEDもすごく好きだった。イントロがフェードインしてくるたびに涙腺が緩むのをこらえるのにもう必死。

全4クールに及ぶARIAも残すは3期13話のみ。多くの人が生涯ベストに挙げるこの最終クールを早く見たいと思う反面、彼女たちの物語もこれで終わってしまうのかと思うと手を付けたくないような複雑な気分。